2002年春から2005年末まで岐阜の大垣市というところに住んでいました。八幡神社を起点に毎年開かれる大垣まつり、そして町の中を流れる水門川の桜並木が見応えがあり、ときどき今でも行ってみたくなることがあります。
夜の巡業「夜宮」が幻想的な大垣まつり
今週末5月14日(土)、15日(日)は岐阜県大垣市で360年余りの伝統を持つ大垣まつりが開催されます。
城下町大垣に初夏の訪れを告げる大垣まつりは、正保5年(1648)、大垣城下町の総氏神の八幡神社が再建整備された折、10両のやまを造って曳きまわしたのが始まりです。360年の伝統を誇り、13両の“やま”が城下町を練り歩き、華麗な祭絵巻を繰り広げます。
藩主下賜の”やま”と町衆の”やま”が並存すること、中京圏のからくり人形と近畿圏の”やま”上芸能という東西の祭礼文化の特徴を持ち合わせていることが評価され、平成27年3月2日に国重要無形民俗文化財に指定されました。
一昨年、岡山に引っ越す前に見に行った時の様子です。当時住んでいたのは愛知県の一宮市というところ。木曽川を挟んで向こう側がすぐ岐阜県で、休みの日にはよく岐阜まで出かけていました。
大学卒業後、社会人生活をスタートさせたのが大垣の町。住んだのは4年程でしたが、誰一人知り合いのいないところから始めたので、思い出深く、今でも続く縁がたくさんある場所です。
お祭りの中心でもある八幡神社は、特に大好きな場所。住んでいた頃は、たまにふらっと30分ぐらいかけて、アパートから歩いたりしていました。
最初の年に、昼間の軕(やま)巡行は見に行きましたが、夜の巡行「夜宮(よみや)」はこのときが初めて。こんなに立派なものだと思っていなくて、どうして住んでるうちにもっと見ておかなかったんだろうと後悔してしまうぐらい、幻想的で情緒あふれる光景でした。
大垣には初夏の大垣まつり、夏の水都まつり、秋の十万石まつりと大きなお祭りが年に3回もあります。自分の育った町は新興住宅地で、お祭りといえば夏の盆踊り大会ぐらい。ここまで歴史のある大規模なお祭りはなかったので、軽くカルチャーショックを受けたのを覚えています。
八幡神社の鳥居。周囲には500もの屋台が並びます。
昭和の雰囲気が残るお化け屋敷。
濃尾震災や戦争によって多くの軕を失いましたが、修復や復元、購入などにより再建が進められ、平成24年に2両の軕が復元されたことで、70年ぶりに全13両の軕が揃ったそうです。
軕はそれぞれ造りや装飾が異なります。舞台の上ではからくり人形や子どもたちの舞踊が披露され、沿道はたくさんの人で賑わっていました。
平成27年3月に国重要無形民俗文化財に指定され、今年秋にはユネスコ無形文化遺産に登録される見込みとのこと。
大垣まつりの概要やアクセスは以下のサイトで見られます。
大垣まつり|大垣・西美濃観光ポータル「水都旅(すいとりっぷ)」
JR大垣駅からは徒歩圏内。名古屋から快速で30分程なので、電車でのアクセスがおすすめです。
『聲の形』の舞台になった水門川の美しい桜並木
こちらは春の八幡神社。
境内にある湧水。こんこんと湧き出ています。
豊富な地下水に恵まれた大垣は水の都と呼ばれ、いくつかの自噴水が町中に残っています。
八幡神社のそばを流れるのは水門川。船町の川湊辺りは、松尾芭蕉の奥の細道結びの地として知られ、とても風情があります。桜の季節は本当にきれい。
今秋映画化で話題の『聲(こえ)の形』は大垣が舞台で、水門川に架かる美登鯉(みどり)橋は繰り返し登場し、2巻の表紙にもなっています。
大垣市出身の漫画家「大今良時」が描く!『聲の形』の舞台紹介in西美濃|大垣地域ポータルサイト西美濃
期間限定ですが、たらい舟での川下りというユニークな催しも。
水の都おおがき舟下り/たらい舟|大垣・西美濃観光ポータル「水都旅(すいとりっぷ)」
関ケ原合戦の際に、石田三成に仕えた山田去歴の娘「おあん」が、たらいに乗って落城する大垣城から抜け出したという戦国秘話に基づいているそうです。
大垣発チーズケーキ専門店「チーズケーキプリンセス」
水門川のほとりにあって、古い建物を改装したチーズケーキプリンセス(当時はチーズケーキファクトリー)さんはお気に入りのお店。時々自分へのご褒美に買って帰っていました。チーズケーキ専門店というだけあって種類が豊富で、いろんな味のチーズケーキがあります。今ではイオンや関西にも出店していて、ずいぶんと有名になりました。
大垣にゆかりのある小説作家
最後に、大垣にゆかりのある個人的に好きな作家さんを紹介します。
まずは朝井リョウさん。『何者』で直木賞を受賞し、『桐島、部活辞めるってよ』が映画化されました。桐島の原作では登場人物がなかなか濃い大垣弁を話しています。未読の方はよかったら読んでみてくださいね。映画と原作では設定が変わっていたりしますが、どちらも面白かったです。
朝井さんの笑えるエッセイもよかったですよ。
続いては、中村航さん。朝井さんと同じ大垣北高校の出身。
『100回泣くこと』や『デビクロくんの恋と魔法』が映画化されていますが、おすすめの作品は『絶対、最強恋のうた』です。
大学生カップルのかわいらしい恋愛の話の中に、ところどころピリッとくる言葉やフレーズがあるのが航さんの小説の魅力。別の作品にも登場する「木戸さん」がいい味出しています。