平成生まれの直木賞作家、朝井リョウさん。
『桐島、部活やめるってよ』が面白かったので、文庫本が出るたび買って読んでいます。
今回の『時をかけるゆとり』は、小説ではなくエッセイ。
単行本は『学生時代にやらなくてもいい20のこと』というタイトルで出ています。
少し前に、短編集『少女は卒業しない』を飛行機の中で読んで号泣しそうになりましたが、これは圧倒的に笑わせる本。今まで、著者のイメージはキラキラした青春を描くイケメン作家だったのですが、いい意味で裏切られました。
タイトルにはゆとりとあるけど、ゆとり世代だからどうこう、みたいなのは全く感じず、誰しも経験したであろう、学生時代のふざけたエピソードにあふれています。
これを読んでからは、朝井さんが馬顔のおバカ男子にしか見えません(笑)
ただやっぱりすごいのが、学生時代を振り返って書いたものではなく、現役大学生の視点で書かれた、リアルタイムの学生生活なのだということ。
小学生で原稿用紙100枚ほどの小説を書き、中学では職員会議にかけられてしまう問題作(原稿用紙521枚!)を夏休みの課題として提出。
そしてその中学のときに、綿矢りささんと金原ひとみさんが芥川賞を受賞。
あの場所に行きたい。あの人たちの横に立ちたい。
悔しいとも、羨ましいとも違う、必ず辿り着かなければ、という使命にも似た感情が、思春期の私の体をいっぱいに満たした。
若くして受賞した二人を見て抱いたこの決意が、そのまま直木賞受賞へとつながるのです。
さらに、その大きな夢が叶いながらも、ここからがまたスタートなのだと悟り書き続ける覚悟に、ぐっときました。
つまらない作品を書けば、仕事の依頼はすぐに途絶える。
もう誰にも読んでもらえなくなったとしても、書き続けるしか道はない。
たまに出てくる、そんな朝井さんの冷静で熱いところ(もしくはただの格好つけ?!)にはっとさせられながらも、大部分は笑える自虐エッセイ。
眼科医や美容師との戦い、お母さんのエピソードには、吹き出しそうになりました。
読み終わったあとに、本のカバーについている著者紹介を見ると、またくすっと笑えるはず。
唯一ゆとり世代とのギャップを感じたのは、幼い頃遊んだ人生ゲームが、ボードゲームじゃなくてプレステだったこと!(笑)