新しい人との出会いは、いつもいい刺激を与えてくれます。岡山では数少ないモンゴル料理を提供する青空アイル。
オープン当初から注目していたものの、なかなかタイミングが合わず、ようやくの初訪問でした。
おいしい料理と珍しいモンゴルのお酒。そして、店主さんとの出会い。
もともとベトナム料理や中国料理などの各国料理を食べに行くことが好きなのですが、そういうお店に足を運ぶことが海外の文化を知るきっかけにもなるんだよなあと、店主さんとのお話の中で改めて感じました。
表町2丁目のモンゴル料理居酒屋「青空アイル」
明るいブルーの看板がお店の名前の青空にぴったり。色とりどりの旗がかかる入口。
青空アイルはあくら通り沿い、表町商店街のアーケードからすぐのところにあります。
県庁通りという、天満屋のあるにぎやかな通りより1本南側の通りが、あくら通り。路面電車の最寄りの電停は清輝橋線の田町です。岡山駅から約1.3km。ゆっくり歩いて25分~30分ぐらいでしょうか。
多くの居酒屋が立ち並ぶ岡山中心部の繁華街を歩いてみるのも楽しいですよ。
クミンのおいしさを知った羊肉料理
ラム、タン、鹿の串焼き。
羊の肉が最初においしいと思ったのは、中国の西安で食べた屋台の串焼きがきっかけ。スパイスがたっぷりかかっていて、それまで抱いていた羊肉はクセがあるというイメージは、すっかり消えてしまいました。
お肉が新鮮なのもあるだろうし、特に日本ではあまり味わうことのなかったクミン(孜然)の香りのよさに感激しましたね。ビールがすすむおいしさです。
大阪の周記蘭州牛肉面で食べた串焼きは唐辛子の辛さが強めでしたが、青空アイルの串焼はそんなに辛くなく、クミンが苦手でなければ食べやすいと思いますよ。
辛い料理が好きなら、ラム肉クミン炒めがおすすめ。
他にも、チャンスマハーという塩茹でした羊肉や、火鍋も食べられます。チャンスマハーは中国で「手抓羊肉」 と呼ばれ、羊肉のかたまりを手で裂いて食べましたね。
パクチーサラダがイチオシ
パクチー山盛りが嬉しい、青空アイル特製のパクチーサラダ。おかわりしたくなるぐらい、大好きな味付けでした。ちゃんと薄切りの羊肉が入っています。
ごま油の香り、パクチーの香り、ピリ辛だれがよく合う羊肉。ニンジン嫌いな相方もこれなら食べれると箸がすすんでました。
さっぱり醤油風味のピータン豆腐
羊肉料理が続いたので、最後にあっさりしたものをと頼んだピータン豆腐。
ピータンがそもそもあっさりなのかと突っ込まれそうですが(笑)
醤油ベースのたれがかかって意外にも和風!他のお店ではごま油の風味が強いものが多かったんですけど、さっぱりしていてお肉料理のあとにぴったりでした。
モンゴルウォッカや紹興酒が飲める
1杯めはモンゴルウォッカから。アルヒウォッカトニック。お酒は基本なんでも好きなので、こういうのすぐ挑戦したくなるんですよ(*´ω`)
トニックウォーター割りなので甘めです。ロックや水割りの方が料理には合うかもしれません。
チャツァルガンワインやミルク酒など、モンゴルのお酒だけでも何種類かあります。
中国のモンゴル料理店でよく飲まれていたのは白酒という蒸留酒。倉敷のニイハオに置いてありましたね。
アルヒウォッカは白酒のような強い香りはなく、ウォッカといえども割って飲めばアルコール度数も低くなるので、飲みやすいと思いますよ。
2杯めは紹興酒。温めてもらいました。
写真が暗くてよくわからなくなってますけど、紹興酒は温かい方が甘味が引き立っておいしいんですよ。
モンゴルの料理や写真から思い出す内モンゴルとの深い縁
中国に内モンゴル自治区があるのをご存じでしょうか?少数民族が多く暮らす中国の特色であり、様々な権力抗争の結果でもあるのですが、中国が治めている昔のモンゴル帝国の一部だった地域です。
私にとって馴染みがあるのは、ウランバートルを首都とするモンゴルの国よりも、中国の中の内モンゴルの方。西安留学時代に、夏休みの旅行で訪れました。
青空アイルで料理を振る舞っているのも、内モンゴルの方。店主さんの奥さんが内モンゴル出身で、奥さんの親族と一緒にお店を始めたのだそうです。
個人的に内モンゴルにはどうも縁があるようで、内モンゴルの省都フフホトへ行く列車の中で、偶然モンゴル族の友人に会ったり、名古屋の語学スクールで働いていたときの中国語講師の同僚も内モンゴル出身の夫婦でした。
その縁で、フフホトの大学へ視察に行ったことも。
岡山に来てからも何人か内モンゴル出身の中国の人と知り合ったし、学生のとき吹奏楽部で演奏した印象に残っている音楽も、ボロディンの『中央アジアの草原にて』という、広い草原の景色が思い浮かぶような曲。
前半はほぼ木管楽器しか出番がなく、担当していたトランペットなどの金管楽器は最後の最後の方でようやく演奏できるという、奏者としては物足りない曲なんですけどね。
なんだか今でもこの曲の雰囲気が好きです。きっと前世は中央アジアの遊牧民族だったのでしょう(笑)
青空アイルに飾ってあった写真。内モンゴルの草原の景色が懐かしくなります。
留学時代の写真を探そうかと、押入れをごそごそとしてたら見つけたこの雑誌。新潮社の『旅』2009年2月号。
買ったことすら忘れていたし、この雑誌が刊行されていたこともすっかり忘れていました。2012年までは出ていたようで、今はもう中古でしか手に入らないのが残念。
角田さんのエッセイ『幾千の夜、昨日の月』を読んで、内モンゴルへの旅行のことを思い出したと書いていたのですが、雑誌『旅』の表紙にも、角田光代さんの中国への旅の特集の文字が。
北京から上海まで、夜行列車に乗ることになっていた。飛行機でいけば2時間だが、十一時間かけていくのである。私はこの列車移動をひそかに楽しみにしていた。中国の広さを体感する機会は、そうそうあるものではない。
何の因果か再び角田さんの文章に出会えました。改めて読んでみたらこの一節に深く共感。私が旅した当時も同じようなもので、西安からフフホトまで24時間かけて列車で移動しました。
今はもっと移動時間は短くなっているはずですが、中国の広さを体感することに価値がある、そのことに変わりはないと思います。
どちらがいい悪いと比較するのではなく、日本の外の世界はこんなにも違うということを、その土地を訪れることで感じてもらえたらいいですね。
岡山で異文化交流の場を作りたいという店主さんの思い
モンゴルの民族衣装が飾られている青空アイルの店内。実際に着てみることもできるそうですよ。
初めて見た、本物の馬頭琴。
アクセサリーと一緒に並べられた名刺の中に、よく知ったお店の名前が。
大元の大福園さん。岡山へ移住してから、語学を使う仕事と繋がる最初のきっかけを作ってくれたお店です。詳しくは移住の経緯に書いています。
大福園の孫さん、心ちゃんご夫婦と出会わなかったら、今の私はなかったぐらい大きな存在です。
青空アイルの店主さん、石邨(いしむら)さんに大福園のことをお話ししたら、他にも共通の知人が何人かいることがわかり、世間というか岡山は狭いなあと。ここ数年でいつの間にか、中国関係のネットワークが築けていた証拠ともいえるかな。
お店を出るときに、店主さんから岡山の異文化交流を盛り上げていきましょう、と声をかけてもらいました。料理のおいしさだけでなく、そういうことも伝えていける場になればと考えていらっしゃるそうです。
馬頭琴の演奏のイベントを開いたり、中国語などの語学講座も始められたそうで、岡山にいながら日本とは異なるものを知る機会を得られる場所でもあると思います。
とにかく自分で「知る」こと。情報を鵜呑みにしないこと。これは本当かな?と疑いの目を持ちながらいろんな角度から考えること。
いろんな場所に足を運び、人に会い、話を聞いてみること。外国人と交流すること。
台湾の二二八事件のことでも触れましたが、私が世の中を公平に見るために大事にしていることです。
岡山には本格的な各国料理を食べられるお店がまだそんなにはありません。異文化交流の活動も、東京などの都市部と比べたら少ないと物足りなく思っている人もいるかもしれません。
だけど、まだ数が少ないということは、これからチャンスがたくさんあるということ。自分で新しく作っていく面白さが味わえるのだから。
料理のおいしさ、それを誰かと一緒に囲む楽しさ、異文化を知ることで生まれる驚き。そんな体験ができる青空アイルへ、また親しい友人を連れて行きたいです。
▼赤磐市周匝に新しくできたモンゴル料理のお店「ジンギスカン友家」。ゲルで食事ができます!